2014年11月18日火曜日

【レポート】大阪市役所向けオープンデータ勉強会

11月7日(金)の午後に「オープンデータ」をテーマとして、大阪市役所の職員向け勉強会を開催しました。

会場はあべのフォルサ。大きな会場におよそ120名の職員が集まりました。

会場の様子

大阪市市民局 区政支援室 渡邊地域資源担当課長よりご挨拶


前半はゲストによる講演。大阪大学の古崎晃司先生と横浜市政策局の関口昌幸さんにお越しいただきました。

講演「オープンデータのメリットと“大阪”での活用事例」
講師:古崎晃司氏(大阪大学 産業科学研究所 准教授)


古崎先生の専門は情報科学。学問にとどまらず、世の中で使わる技術を作りたいとの思いをお持ちで、オープンデータとの関わりでは、LODチャレンジ実行委員会の関西支部長として、地元大阪・関西でのコミュニティを大きくするべく、活動を続けています。

オープンデータの概要について、定義や活用メリットをお話しいただいたのち、大阪での取り組みや事例の紹介をいただきました。

LODチャレンジの活動では、国内初のオープンデータ活用に関するコンテストとして「LODチャレンジ2011」を開催。大阪市でもイベントが開催されました。以後、LODチャレンジは毎年開催され、昨年からは大阪イノベーションハブでもハッカソンなど、連続でイベントを開催。大阪市が提供したデータをもとに「マップナビおおさか」をはじめ、大阪発のアプリやアイデアが成果物となったそうです。

また、大阪イノベーションハブは、英国のオープンデータ推進団体「Open Data Institute(ODI)」の連携先となるオープンデータ推進拠点「City Node」にもアジア初の拠点として選ばれているなど、国際的な動きとも連携を進めているとのことです。


古崎先生は、これらの動きから、大阪にはオープンデータ利活用の素地が整っていると指摘され、今後の課題として、一過性にならず実際に使われる、本当に役に立つものにつなげていくことを挙げられました。

次いで、実際に役立つ事例として、2014年8月に開催されたCivicHackOSAKA2014の例を紹介いただきました。

同イベントでは、IT技術者と行政職員がチームを組んで同じ目線でアイデア出しや開発に取り組んだ点が特徴で、40名の参加者のうち半数近くが行政職員という構成で開催されました。

そこから生まれたアプリとして、オープンデータ・カフェ@大阪のキックオフでも紹介された「PUSH大阪」の例を取り上げていただき、大阪市の情報発信に際し、ユーザは必要な情報だけを受け取り、すでに配信されているRSSを利用するため、自治体職員にも余計な業務が増えないなどの特徴があげられました。

今後こうしたアプリの利活用が拡がるために、RSSのライセンス指定をオープンデータに沿うように整備する必要あることが指摘されました。

さらに、オープンデータの活用が浸透するために、LODについても解説をいただきました。LODは「Linked Open Data」の略で、複数のオープンデータをつないで活用するための仕組み。LODチャレンジでも、「メイド・イン「『地元』」というサービス案が、アイデア部門の最優秀賞を受賞したそうです。

議論のまとめとして、

・“誰でも自由に使える”形で公開することで、様々な形で活用できる
・役立つ事例の発掘には、“現場のニーズ”が重要
・工夫次第で、今あるデータを“そのまま”利用できる
・単独ではあまり使えないデータも、他のデータと“つながる(組み合わせる)”ことで、新しい価値が生まれる

というお話をいただき、最後に「せっかく、手間をかけて作ったデータなのだから、オープンデータとして活用を!」との呼びかけをいただきました。

古崎先生のプレゼン資料は、以下で公開されています。




講演「オープンデータの活用による横浜経済の活性化」
講師:関口昌幸氏(横浜市 政策局 政策課 政策支援センター)


横浜市では政策支援センターが、市民と政策課題を共有し、政策の創造・協働を担うミッションを掲げていて、その流れでオープンデータへの取り組みを推進しているそうです。同センターが発行している「調査季報」の174号ではオープンデータが特集され、内容はすべてオープンデータとして自由な二次利用が認められています。

関口さんからは、国が掲げるオープンデータの原則に触れたうえで、自治体がオープンデータを進める際の課題を提示され、自治体として推進する意義を、

1 市民に必要な地域情報を、ユビキタスに提供するための仕組みづくりの契機として
2 政策課題を市民と共有化し、客観的なデータに基づく対話によって、共創知を形成することで、協働での解決に向けたアクションに結びつける契機として
3 公的データを有効にマネージメントし、流通させることで、地域に新たな産業や雇用を創出し、地域を総合的にプロモーションしていくための契機として

といった観点から示していただきました。

横浜では、市民の取り組みとして、

・WHERE DOES MY MONEY GO?~税金はどこへ行った?~
・横浜オープンデータソリューション発展委員会
・横浜オープンデータポータル
といった活動が生まれているほか、市会での視察、報告、参考人招致などの動きや、市役所でも
・横浜市オープンデータ推進プロジェクト
・日本マイクロソフト社との連携協定
・総務省の実証実験への参画

など、外部との連携も含め、様々なアクションを起こしている様子や、オープンデータによる「都市・経済の活性化」や「安全・安心」の取り組みなどを紹介いただきました。

それら活動の成果として、経産省・総務省ユースケースコンテスト優秀賞受賞を受賞した「東海道中ぶらり旅」のアプリや横浜市金沢区が進めている「かなざわ育なび.net」などのサービス例が挙げられ、さらには、市全体の動きをそろえるために、「横浜市オープンデータの推進に関する指針」が2014年3月に策定されたそうです。


今後の取り組みとしては、市役所内の職員の啓発やオープンデータの整備、市民・企業や他自治体の連携促進などがあり、具体的には
 
①オープンデータの提供・活用に向け、新Webサイトオープン時にあるべき主要なオープンデータの整理
②市データカタログの作成
③オープンデータ等を活用した情報分析による課題・ニーズの提示や庁内における政策立案・情報分析の支援、政策提案、市民との課題の共有のための情報ポータルサイト((仮称)横浜地域力ポータルサイト)の作成
④民間による推進の動きとの連携

などが挙げられました。

また、大きな取り組みとしては、地域の社会的課題やNPO法人などの支援団体の取組みを可視化し、市民参加を促すことで新しい公共の仕組みをつくるウェブプラットフォーム「LOCALGOOD YOKOHAMA」が、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボとアクセンチュア株式会社との協力で立ち上げがあり、横浜市のオープンデータが活用されるそうです。

利活用を進める市民に向けては、若者の参画を目指した「よこはまユース アイデアソン・ハッカソン」が開催されるなど、イベントなどの開催も継続的に進化を続けているそうです。


ワークショップ「データ活用を考えるアイデアソン」
進行:原 亮(株式会社CCL 取締役)

おふたりのご講演ののち、参加職員全員によるアイデア出しのワークショップを開催しました。

このワークでは、それぞれが自分の担当業務で持っている各種データを洗い出し、その活用方法を考えるものとして行われました。オープンデータのテーマで、100名を超える行政職員が一斉にアイデアソンを行ったのは、今回が初の事例ではないでしょうか。

100名規模でのアイデアソン!

ワークでは、所属の異なる職員同士が4~6名でグループになり、お互いのアイデアをディスカッションで交換しながら、全員でデータの活用方法を考えた結果、数百件のデータのリストやアイデアが集まりました。

所属の異なる職員でグループに 

ペアでのブレスト 

お互いのアイデアを交換 

活発な意見交換が続きます

アイデアを全体へシェア。民間事業者向けの活用案なども

 古崎先生と関口さんからもコメントをいただきました


ワークで出たアイデアを以下、一部ご紹介します。

アイデア1:港湾周辺環境アクセス結果
▼データの内容
大気・水質・水生生物の現況と将来予測評価データ
▼活用案
水辺の生物情報、将来の住環境指標、釣りマップ情報
▼実現を阻む壁
難しい専門用語や複雑なモデル計算
▼借りたい力や協力者
用語解説、数値入力だけで自動計算

アイデア2:独居高齢者訪問・見守りにて集約した独居高齢者の声
▼データの内容
独居高齢者向けの在宅サービスの開発
高齢者の多い地域での商品開発
介護ニーズに対するサービス提供
▼活用案
高齢者に対する健康アドバイスサービス、保健・健康に関するデータ
▼実現を阻む壁
データを元に適切にアドバイスが出来る人材の不足
▼借りたい力や協力者
Nurse資格を持っていても就労してない人材

アイデア3:暑さ指数
▼データの内容
過去数年の夏の暑さ指数
▼活用案
どんな人が救急搬送されているか(年齢・職業など)を分析し、ターゲットを絞った注意報を出す
飲み物の目安・入荷
▼組み合わせるデータ
救急搬送
▼実現を阻む壁
有意義ではないのでは?長期間の予想が出来ないなど
▼借りたい力や協力者
気象予報士

アイデア4:樹木台帳
▼データの内容
市内の都市公園内の植栽の種類・数の一覧
▼活用案
観光案内
▼実現を阻む壁
正確なデータになっているか
▼借りたい力や協力者
現場事務所

ワークでは、アイデアを実現させようとした際の課題を、実現を阻む壁として挙げ、それを乗り越えるために必要な力や得たい協力者を考えました。

オープンデータを推進する際によく挙がる声として、自分たちがオープンデータを整備するための余力(時間や費用)がないというものが典型と言われていますが、今回のワークで「借りたい力や協力者」を出し合ったところ、市民やボランティアなどが挙がったほか、上記の例に示したような当該分野に精通した専門家、さらには職場内での協力体制といったものが新たに示されました。

今回参加した職員からのアイデアをもとに、実現可能性のあるもの、発展可能性のあるもの、そして、実現したら市民の役に立つものなどを検討し、大阪発のオープンデータ活用やシビックテックの新しい成果につなげていくことがポイントとなります。


ワーク後には、大阪市総務局より、「今後の本市のオープンデータ施策の方向性」と題した市役所内の今後の動きの説明があったほか、CCLより、今後開催するオープンデータ活用を目指した市民協働の場(オープンデータ・カフェ、アイデアソン、ハッカソン)などのご案内をさせていただきました。

大阪市総務局より今後の動きについて

「大阪から考えるシビックテック」事業では、市役所各部局や市民のみなさまの力をあわせて、それぞれがもつアイデアを実現に結び付けれるよう、活動を続けてまいります。

ご登壇いただいた講師の先生方、ご参加いただいた職員のみなさま、貴重な声を聞かせていただき、ありがとうございました。



2014年11月17日月曜日

「健康アプリで大阪を救え!CivicTechアイデアソン」開催のお知らせ

市民×ITの力で地域の課題を解決する
アイデア創出ワーク


市民やITエンジニアやデザイナーが、大阪の「健康」をテーマに、地域で役立つITサービスを考えるアイデア創出のワークショップです。開催後は、アプリ実現のための開発イベント「ハッカソン」や大阪市で開く予定のアプリコンテストにつながります。

▼日時:2014年11月29日(土) 10:00-17:00(開場9:30)
▼会場:大阪イノベーションハブ
  (大阪市北区大深町3番1号 グランフロント大阪 ナレッジキャピタルタワーC 7階

▼定員:30名(要事前申込)
▼参加費:無料

▼参加申込:下記リンク先フォームよりお申し込みください。
http://goo.gl/zh9vNj

▼主催:大阪市
▼共催:大阪イノベーションハブ
▼企画運営:株式会社CCL

▼プログラム(予定)
10:00~10:10 ごあいさつ
10:10~12:30 アイデアソン第1部
12:30~13:30 昼休憩
13:30~16:30 アイデアソン第2部
16:30~16:55 成果発表
16:55~17:00 各種ご案内
※プログラム、時間配分等は当日の状況により変更になる場合がございます。

▼ファシリテーター
佐々木 正人(ささき まさと)
株式会社CCL 代表取締役/岩手大学地域連携推進センター 特任研究員
JR東日本企画盛岡支店のハウスエージェンシー(代理店)勤務を経て、2010年にNPO法人で独立。 独立時の法人貯金残高8万円から年商1200万円までの「小さいながらも立ちあがり、続く取り組み」を続けている。事業では、意欲的な企業・学生をつなぎ、地域資源を活かした商品やサービスの開発を行っている。2012年、株式会社CCL設立。同代表取締役に就任。岩手大学では大学と地域の連携により、地域からのイノベーション創出に向けた場づくりを進めている。

【アイデアソンとは?】
「アイデア」と「マラソン」をかけあわせた造語で、決められたテーマについて、その場に集まった人たちで、アイデアを出し合うイベントを指します。ITの分野から、スマホアプリのアイデアを出す手法として広がり、子育てや防災など、地域で抱える課題をテーマとしたアイデアソンも、各地で広がっています。

※本イベントは大阪市「大阪から考えるCivicTech」事業にて開催いたします。

【レポート】第1回オープンデータ・カフェ@大阪

10月24日(金)に大阪でのオープンデータ・カフェのキックオフイベントを開催しました。大阪での立ち上げは、大阪市市民局の「大阪から考えるCivicTech」事業での実施となり、大阪市さんの主催で行われました。

直前のリリースだったにも関わらず、わずか数日で定員が埋まり、急遽の増席。それすらも埋まってしまい、地域の関心の高さがうかがえました。

【追記】動画アーカイブを本記事の下部に掲載しております。あわせてご覧ください。
<開催概要>
「第1回オープンデータ・カフェ@大阪」
大阪から考えるCivicTechとオープンデータ
~市民×ITで地域課題に挑むキックオフ

▼日時:2014年10月24日(金) 19:00-21:00
▼会場:Yahoo!JAPAN大阪 会議室 (大阪市北区小松原町2-4 大阪富国生命ビル27階)

▼定員:40名
▼参加費:無料

▼主催:大阪市
▼企画運営:株式会社CCL

会場の様子。ITエンジニアのほかNPOや社会起業家、
行政職員など、分野問わずお集まりいただきました

大阪市都島区の田畑龍生区長よりごあいさつ


基調講演
「オープンデータで何が起こるのか?~先進地域の最前線」
講師:福島 健一郎氏
(一般社団法人コード・フォー・カナザワ 代表理事/アイパブリッシング株式会社 代表取締役)

田畑区長のごいあさつののち、金沢からお招きしたコード・フォー・カナザワの福島さんに、基調講演を行っていただきました。先進地の事例として、金沢でのCivicTech、オープンデータの取り組みや、Code for Kanazawaの成り立ち、発展などをお話しいただきました。

(一社)コード・フォー・カナザワ代表の福島健一郎さん

全国初のCode forとして立ち上がったCode for Kanazawaは、福島さんを理事長として今年から一般社団も立ち上げ、活動を充実させています。組織やコミュニティの立ち上げに重ねた検討と工夫は、全国のCivicTech活動のお手本としても注目されています。

また、金沢発のアプリ5374.jpも、公開されたソースコードが全国へ広まり、各地のCivicTech活動で活用されています。

福島さんからは、次のようなお話がありました。

【オープンデータについて】
・オープンデータの定義については、「データにだれもが制限なしに利用でき」「再配布も自由」で「機械可読性の高いもの」。地域課題の解決のためにオープンデータを活用するプロセス、その意味について話したい。

・金沢市でもオープンデータはゆっくりながら進めている。施設情報が中心で、アート系のイベント情報も掲載。珍しいところでは「画像オープンデータ」をやっている。観光写真をオープンデータにすることで、パンフレットなどの媒体が作りやすいくなる。

【CivicTechとの関わり】
・こういった動きは、code for Americaが発祥。自分も2012年の春ごろに知ったが、ボストンの消火栓マップ(アプリを使って市民が市内の消火栓位置情報を共有し、自分が名前を付けた消火栓が雪に埋もれないように管理する)の話を聞いて、世の中の課題がITで解決できる、すごい!と思った。

・これまで世の中にいいことしたいなと思っていても、道や公園のゴミ拾いや雑草引きくらいで、そういうのはちょっと…と思っていた。それより自分のITスキルを使って世の中に貢献できればと思っていたが、アメリカでそれができた!だったら自分もやろう!と。

【Code for Kanazawaのポリシーについて】
・必ず自分たちでコードを書き(≒アプリなどのプログラミングを行う)、それで地域の問題を解決することがミッション。

・中立性を確保。特定の自治体や企業と結びつきはしない。(活動地域は石川県全域)

・民間でできる事には手を出さない(安い価格で請け負うなど他の業者の邪魔をしない)

・著作権は自分たちで保有する

【課題解決へ向けて】
・Code for Kanazawaの活動について市民からよくわかってもらえない時期もあり、まずプロダクト(製品)をつくろうとした。ただ「自分達が作りたいものを作るのはCivicTechではない。あくまで課題解決が大事」ということで市民から課題の投稿も受けながらやっている。しかし、課題やその解決のアイデアが見つかっても、使えるデータがなくすぐに取りかかれない事も多くあった。

【5374.jpの広がり】
・その中で出てきたのが「5374(ゴミナシ).jp」というWebアプリ。自分の街のごみの収集日やごみの区分情報が一目でわかるものだが、金沢市役所に言って公開されているデータ(オープンデータではないが)の使用許諾を受けて作成した。

・アプリにはテクノロジーも大事だが、デザインが大事。ごみ関係では他に似たようなアプリはたくさんあったが、見てもらえてない。そのため、デザイン性にこだわり、メンバーが2日間、ハッカソンのように集中して開発した。

・5374.jpは現在50を超える自治体版が現地の有志によりつくられている。その理由は、オープンソース(他でもデータ等入れ換えれば自由に使える)であることヤアプリ運用のためのサーバが不要(=運用にもお金がかからない)こと、シンプルにデザインが良く、扱いやすいところ(この軽量性がシビックテックの良さ)などが考えられる。また、海外でも英語版ができるなど、多言語化も始まっている。

【CivicTechのコミュニティ運営】
・Code for Kanazawaについては、現在、一般社団法人(契約主体にもなり、コミュニティも含め運営の最終責任をとる)とコミュニティ(プロジェクト単位で自由に活動)で構成している。

・シビックテックをやっていて感じる事は、「技術」ありきではないこと。できるだけ簡単・シンプルな方がよい。機能をいっぱいつけても市民には使いにくいだけ。「何ができるか、どう見せるか」にこだわることが大切。また、データドリブンではなく、課題ドリブンであること。市民から必要とされてないものはつくらない。課題解決のために作るべき。だから多くの分野でのオープンデータが必要。

・コミュニティを大事にする。何でも行政や企業に頼らなくとも、自分たちで作れるものは自分で作る。そうするとお金や効率性ありきの話ではなくなる。

【今後の展開】
・オープンデータの力はまだまだこれから。オープンデータを活用したビジネスもこれから。昨年自分の会社が開発したアプリ(気象庁のデータも活用した、災害種類(地震や水害など)に応じて最も近く安全な避難所への誘導支援アプリ。昨年の金沢市アプリコンテストでグランプリ獲得)についても、昨年静岡県内の高校生に協力してもらい観光地での避難訓練に活用した。今後ビジネス化して広げていきたい。

・情報=価値である。インターネットの普及により「情報は自由(free=無償)になりたがっている」が、一方で「情報は高価値(expensive)になりたがっている」とも言われており、正しい方法で適切に使えばものすごく価値があるもの。

・オープンデータがなかなか進まないのは、やはり情報=価値という認識があるからではないか。確かにオープンデータを進めるということは、市役所が権力を手放すことともいえる。しかし、今それを進める事が大事。

・オープンデータと、それをもとに進めるシビックテックは、「人を幸せにできるとても意義あるチャレンジ」であると考える。大阪でもがんばってほしい。

福島さんのご講演内容は、下記スライドをご参照ください。



レポート「大阪発 オープンデータで目指す市民協働の場づくり」
報告者:原 亮(株式会社CCL 取締役)

続いてCCL原より、「大阪から考えるCivicTech」事業での活動概要について説明を行いました。


 
活動予定は本事業WEBサイトおよび当ブログにて公開予定


レポート「地域で立ち上げるCivic Tech ~生駒ではじまった挑戦」
報告者:佐藤 拓也 氏(Code for IKOMA 代表)

続いて、近隣の事例として奈良県生駒市で活動するCode for IKOMA代表の佐藤さんから、生駒での事例紹介を行っていただきました。

Code for IKOMA代表の佐藤拓也さん

Code for IKOMAでは、市役所との協働により「子育てアプリアイデアワークショップ」(主催:生駒市)を開催。子育て世帯の方々が多数集まり、活発にアイデアが出された様子をご紹介いただきました。

佐藤さんからは、以下のお話をいただきました。

・奈良県生駒市で、Code for JAPANの理念に賛同し、2014年1月に設立。これまで「5374.jp」生駒市版、「税金はどこへ行った?」生駒市版、生駒市の天気をつぶやくツイッターなどを制作。

・「地域の課題に注目してその解決を探る中でオープンデータの活用を検討し、アプリ等を開発、運用してまた課題を抽出し…」というサイクルを回しながら進めていく。

・生駒市と連携して、「Iko mama papaアプリ開発プロジェクト」を進めている。生駒市の重点施策である「子育て」に関する課題解決につながるアプリの開発を市民協働で進めていくもの。

・先日(10月18日)その第1弾「子育てアプリアイデアワークショップ」を行った。40名弱の参加で、約150個ものアプリ等のアイデアが出てきた。これは驚異的な数字。参加者の満足度も高く、最後のチームプレゼンも素晴らしく、同席していた生駒市の副市長が「全部市でやりたいくらい」と絶賛。

・今回の取り組みは、生駒市の「市民活動推進センター」との連携で実現。他の市民活動団体との連携も取りながら進めている。また、副市長が主宰する市民グループ「生駒のまちづくりを考える会」でも取組みを紹介、参加を呼び掛けたりもしている。

・今回のイベントの評価が高かったのは、テーマが明確でそれに合った参加者が多かった事、そして当事者目線同士での議論ができた事による。当事者の中に入り、共に議論しながら進める事が大事。

佐藤さんのご講演内容は、下記スライドをご参照ください。


パネルディスカッション
「市民×ITで地域課題に挑むには?~大阪のCivic Techはここで勝負!」
パネリスト:
 福島 健一郎氏
 佐藤 拓也氏
 田畑 龍生氏
 新井 イスマイル氏(明石工業高等専門学校 講師)
モデレーター:原 亮

後半は、明石高専の新井先生にもお入りいただき、会場のみなさまとともに、大阪でCivicTechの活動を展開するためのディスカッションを行いました。

冒頭は参加者のみなさん同士での感想・意見のシェア。
2人1組で2分間の意見交換です

新井先生からは、高専の学生たちのよるCivicTech活動、Code for KOSENの取り組みについてご紹介いただきました。

明石高等専門学校講師の新井イスマイルさん(左から2人目)

高専生の世代にとって、「地域課題」は、どうしても自分ではなく、他人事。それを「ジブンゴト」にして解決することのすごさを知ってほしいと思い始めたそうです。なので、活動の初めは「自分事」である「学校の時間割や行事」から着手。その後、全国の高専に輪が広がり、高専55校中19校、38人が参加をしているそうです。

Code for KOSENの活動紹介


ディスカッションでは、以下のようなやりとりが行われました。

Q:エンジニアとして、なぜシビックテックの活動に参加するのか?

(福島氏)
・元々ボランティアとか全くするタイプではなかった。雑草引きとかも面倒臭い、という感じ。自分のスキルを活かせる、自分のスキルで世の中をよくできる、というのがモチベーション。世の中のためなら、会社で良い製品を開発するということも考えられるが会社はどうしても営利優先。お金が絡まないところでやれるのがシビックテックのいいところ。

(司会)
・福島さんは会社経営者でもあるが、非営利という点でもどかしさはなかったか?

(福島氏)
・今自分がやっている事が本当に役に立っているのか?という葛藤はある。ただ、先ほども言ったが「単に安価で仕事を請けることはしない」というポリシーはもちながらやっている。

(司会)
・高専生を巻き込む際に「いける」という予感はあったか?

(新井氏)
・高専生はスキルはあってもこれまで「コードを書く」と言っても学内限りの公表で、たまにコンテストに出てくらいで外の世界を知らない。これではもったいない、という問題意識があった。自分の技術力がどこまで世の中の役に立つか、学校の外に出て知ろう!というのがアイデアソン・ハッカソン。小さいところから少しずつ進めてきている。

(司会)
 ・「役に立つ」ことによって、彼らに自信や自己肯定感が生まれてくるという事もあるのか。

(新井氏)
・それはある。彼らはお金で釣っても乗ってこない。「どれくらい反響があるか?」というところに高いモチベーションを感じているようだ。

(司会)
・佐藤さんは仙台出身で大阪在勤。生駒でシビックテックを立ち上げたのはなぜか。

(佐藤氏)
・元々は東日本大震災の復興支援でハッカソンとかに参加したのが始まり。防災をテーマにしたハッカソンを勤務する会社で開催した際にCode for JAPANの関治之さんと会った。震災復興や防災ではデータが役に立つが普段の生活にも役立つという事を教わった。

・震災当時、グーグルなどのIT企業なども被災地支援・人命救助に役立つような、さまざまなITサービスを立ち上げていた(パーソンファインダーなど生き残った人たちが繋がれるためのもの等)が、そのサービスを作っていくエンジニア達は利用可能なデータが全くと言っていいほど無く、ショックを受けたと聞いた。仙台出身の自分としては今回の震災の経験を生かしていくべきとの思いから生駒での活動をスタートさせた。

Q:スキルを地域のために役立てたいという動きがある中で、行政はどう関わるべきと考えるか。

(田畑区長)
 ・ぜひ、地域でもこういう活動が進んでいってほしいと思う。ただ概念ではわかりづらいので今回の取り組みで早くプロトタイプを作って、それを見せながら進めたい。大阪にはコミュニティをまとめるコミュニティがあるのも特徴。「大阪を変える100人会議」などNPOのコミュニティもある。そんなところからも概念を伝えて進めていければ。

(司会)
・その100人会議のメンバーの方も来られているが、どんな団体か教えてほしい。IT関係の人もいるのか。

(会場より)
・大阪を変える100人会議は、大阪府内で地域課題を解決するため活動するNPOや社会起業家の集団。メンバーの中にはIT関係の起業家もいる。ぜひ、連携したい。

Q:アイデアソン、ハッカソンはその場は盛り上がるけど、そのあと何も残らない…という事がよくある。その中で、ハッカソンの有効性を何に見出すのか。

(福島氏)
・確かにその場限りとか、成果物としてのクオリティがどう?という部分はある。ただ、盛り上がってチームができたり「何かやろう」という意識が生まれたりしている。(ハッカソンで)一度集まったエネルギーが、その後半分でも残っていってまた次の時に新たな人が入る、そういう人をつなぐ場として続けていくことが大事なのでは。

(新井氏)
・ハッカソンはエンジニア主体でやるとどうしても「思い込み」や「他人事」、当事者性がなく偏見も感じられるようなものになり、本当に困っていることのポイントがずれていることも。その意味で、今年の8月末に行われた「Civic Hack Osaka2014」(以下「CHO2014」)では公務員と一緒にハッカソンをすることで本当の課題を聞くことができ、有益だった。

(佐藤氏)
・テーマに対してどれだけ「ジブンゴト」に感じられるかが大事なんだと思う。そのためにはテーマに合った人がいかに出るかが大事。ハッカソンには成果物のクオリティで限界もある。その先を「code for」のチームが形にしていけばよいのではないかと思う。

(司会)
・CHO2014での成果物が最終的にアプリになったという話を聞いた。開発に携わられた方も来ておられると聞いている。少し話を伺いたい。

(会場より)
・大阪市HPの新着情報をその人の属性や興味に応じて選択しプッシュ通知でお知らせする「PUSH大阪」というアプリを開発した。現在iOS版がAppstoreでダウンロードできる。

(司会)
・CHO2014は、行政職員が参加する初めてのアイデアソン・ハッカソンだったが、PUSH大阪以外にもとても面白いサービスやアプリが生まれ、とても充実したものだった。

・そこで気づいたことだが、行政と市民の関わり方は、これまでは「クレーム」や「注文」といったものが多かった。そうではなく、その枠組みを壊し、みんなで作り上げていく、一緒に考えていくということが大事なんだ、と。これをイベント以外の手法でどう取り入れていくのかが課題。

Q:オープンデータについては、素材はこれから出していくことになるが、やみくもに出していけというのではしんどい。自治体との関係はどうか?

(福島氏)
・金沢市とは少なくとも月1回以上は話している。お願いや相談もしていくが、場合によって「主管課の判断が必要なので待ってほしい」「やっぱり出せない」というような話もある。

(佐藤氏)
 ・生駒市へは、5374.jpを作った際に「市長へのメール」で市長に訴えた。そこで市民協働担当部署につないでもらった。先日の子育てアプリの件も、データの提供も含め一緒にやっていこうというスタンス。

Q:シビックテックで先行した取組みを進めているのは、中小の地方自治体。東京は技術者は多いがそういう動きはまだ見えない。大都市だと規模的に地域の問題は見えにくいというのもあるかもしれないが、その中で大都市である大阪市はどう取り組むべきか?

(田畑区長)
・課題にもよると思う。例えば防災関係だと湾岸部の区とそれ以外の区では全く課題が異なる。課題によって、区ごとや複数区にまたがって取り組む…など色々やり方はあると思う。

(福島氏)
・Code for Kanazawaの活動範囲は石川県全域。自治体の規模、というよりその課題を「ジブンゴト」と感じられる距離感が大事ではないか。

(会場より)
 ・ボストンの消火栓など、とても素晴らしいと思うが大阪と比べたら市民意識の差というものもあるように思う。生駒の子育てアプリも「便利である」と「子育ての課題解決」というところには少しギャップがあるのではないか。

・佐藤さんの言う「とんがった市民」だけではなく、マンションにこもっているような住民もアプリを使う事で「単なる行政サービスの消費者」ではなく「公共に参加する市民」にするように巻き込んでいけるようなアプリが開発される事を望んでいる。

(新井氏)
・地域課題解決したいメンバーは、あちこちにいる。NPO とエンジニアを結びつけられれば、行政から少しだけお金をもらってできればいいのではないか。そういう層の厚いところにエンジニアが入っていくことが大事。大阪には可能性があると思う。

Q:最後に大阪へのエールを、田畑区長はそれを受けての今後の決意を

(佐藤氏)
・大阪市は大阪イノベーションハブを中心にハッカソンなどが盛り上がっている。ゆるい感じも出しながら進めていってほしい。

(新井氏)
・大都市は豊かな税収があるとはいえ、今後はすべて行政主導で課題解決できない時代に来ている。市民協働というのは段階的に「市民への権限委任」「市民による管理」に向かっていく、とアーンスタインが40年以上前に提言している(『住民参加の梯子』)が、そういう時代を見据え先手をとって動いていく大阪市であってほしい。

(福島氏)
 ・大阪は大都市。いろんな分野のコミュニティがたくさんある。これまでcode for…の活動が起こってないのが不思議なくらい。ポテンシャルはあるはず。今回のイベントもあっという間に定員が埋まったと聞く。cfKはまだ発足1年だが、できたことはたくさんあった。大阪市も来年の今頃はたくさんの成果物が生まれる事を期待している。

(田畑区長)
 ・回転すしのシステムは大阪が発祥。一度「おもろい」というスイッチが入ったらぱっと広がるという特性があるのが大阪。

・オープンデータも他都市と連携しながら進めたい。オープンデータの様式を統一するなどして、同じアプリがどの都市でも使えるようにやっていきたい。

・これから様々な取り組みを進めていくが、皆さんとのコミュニケーションも大事にしながら進めていきたいのでよろしくお願いしたい。


大阪での取り組みに向けて、様々な意見が出た今回のオープンデータ・カフェ。参加者のみなさまからのアンケートでも多数のご意見をいただきました。後日記事をリリースしてまいります。

また、当日の動画アーカイブは以下をご参照ください。



今後の大阪でのCivicTechの活動にご期待ください。

2014年11月7日金曜日

【定員御礼】「第1回オープンデータ・カフェ@大阪」開催のご案内

「第1回オープンデータ・カフェ@大阪」
大阪から考えるCivicTechとオープンデータ

~市民×ITで地域課題に挑むキックオフ

【定員到達のため、申し込みを締め切りました。多数のお申込み、ありがとうございました】


ITを活用したまちづくりの新しいスタイルが、全国で立ち上がり始めています。

生活、防災、観光、健康福祉など、さまざまな分野で、スマホアプリやWEBサイトを、市民とIT技術者やデザイナー、そして行政がともにサービスとして作り上げ、地域課題の解決をはかる新しいスタイルです。

行政の情報を自由に活用できる「オープンデータ」やIT技術者やデザイナーが地域のためにスキルを活かす「Civic Tech」について、考え方や事例の紹介を行い、みなさんと一緒に大阪でできる次の一歩を考えるセミナーです。

▼日時:2014年10月24日(金) 19:00-21:00
▼会場:Yahoo!JAPAN大阪 会議室(大阪市北区小松原町2-4 大阪富国生命ビル27階)

▼定員:40名(要事前申込・締切済)
▼参加費:無料

▼主催:大阪市
▼企画運営:株式会社CCL
▼協力:Fandroid KANSAI

▼参加申し込み
下記リンク先のフォームよりお申込みください。
(定員のため締め切りました)

▼プログラム
19:00 開会

19:00-19:10 あいさつ
 田畑 龍生(大阪市 都島区長/区長会議ICTプロジェクトチームリーダー)

19:10-19:50 基調講演
「オープンデータで何が起こるのか?~先進地域の最前線」
 福島 健一郎氏(一般社団法人コード・フォー・カナザワ 代表理事/アイパブリッシング株式会社 代表取締役)

19:50-20:20 レポート
「大阪発 オープンデータで目指す市民協働の場づくり」
 原 亮(株式会社CCL 取締役)
「地域で立ち上げるCivic Tech ~生駒ではじまった挑戦」
 佐藤 拓也 氏(Code for IKOMA 代表)

20:20-20:55 パネルディスカッション
「市民×ITで地域課題に挑むには?~大阪のCivic Techはここで勝負!」
[パネリスト]福島 健一郎氏、佐藤 拓也氏、田畑 龍生氏、新井 イスマイル氏(明石工業高等専門学校 講師)
[モデレーター]原 亮

20:55-21:00 ご案内

21:00 閉会

▼スピーカー紹介
福島 健一郎 氏(ふくしま けんいちろう)
1971年生。アイパブリッシング株式会社代表取締役、一般社団法人コード・フォー・カナザワ代表理事、富山大学芸術文化学部非常勤講師。モバイル時代の コンテンツ、ITサービスの開発に取り組んでいる。また、石川県を中心にオープンデータ、オープンガバメントに取り組み、地域課題を技術で解決するシビッ クテクノロジストとしても活動。Code for Kanazawa発での取り組みとして、地域でのゴミ収集を取り上げたアプリ「5374.jp」の活用が、全国で広がっている。

佐藤 拓也 氏(さとう たくや)
1983年生。仙台市出身。大阪の民間気象会社でエンジニアとして勤務する傍ら、関西でのITコミュニティ活動にも注力。東北と関西をつなぐ Fandroid KANSAIを立ち上げ、防災×ITのワークショップを仕掛けたほか、居住地の奈良県生駒市では、Code for IKOMAとして活動を開始。ITを活用した地域活性化での貢献を展開している。

新井 イスマイル 氏(あらい いすまいる)
明石工業高等専門学校 電気情報工学科講師
奈良先端科学技術大学院大学在学時より、オープンデータの要素技術となる、セマンティックWebの研究開発に従事している。2014年1月には、教育機関 では初となるオープン学務データを明石高専から公開。同月、Code for KOSENを創設。高専生がITとデザインの力で、「こうしたい!」を実現する組織として、全国の高専の教員・学生たちの有志とともに、Civic Techの活動を展開している。

原 亮(はら りょう)
株式会社CCL 取締役/Fandroid EAST JAPAN 理事長
1974年生。東京都品川区出身。編集者・ライターを経て、仙台にてモバイルコンテンツの制作会社へ。営業、ディレクター、取締役等を歴任し、フリーへ転 身。以後、東北を拠点に、地元行政や企業と各種団体で、地方×モバイルで飛躍できるプレーヤーを輩出する活動を継続。ITイベントの開催等を通じて、東北 と全国の地域間連携や、ハッカソンの企画・運営なども手がけている。

※プログラムは一部変更になる場合があります。

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