2014年12月25日木曜日

【レポート】第3回オープンデータ・カフェ@大阪 in 住之江

3回目のオープンデータ・カフェ@大阪は、「健康」をテーマに住之江区にお邪魔しての開催でした。

第3回オープンデータカフェ@大阪 in 住之江
▼日時:2014年11月19日(水) 19:00-21:00
▼会場:きずなステーション(住之江区役所3階)



会場は、住之江区役所の「きずなステーション」で、計38名の方にお集まりいただきました。

住之江区では、区民の語り合いの場として「シャベリバ」が定期的に開催されています。きずなステーション以外にも、南港・北加賀屋・玉出・安立で行われており、今回のオープンデータ・カフェは、この「シャベリバ in きずなステーション」にお邪魔しての開催となりました。

※関連リンク
住之江区のラウンドステーション情報(シャベリバ)

来られた方の職種や年齢は多種多様な方々が来られており、保健師や栄養士の方、整体師の方、図書館勤務の方、居酒屋の亭主、区長や区役職員など、年齢や職種も違った方々が集まり、皆で気軽に語り合える場になっています。我々スタッフも、はじめて参加させて頂きましたが、アットホームな雰囲気で、自由な議論の場は、オープンデータ・カフェにもぴったりな集まりでした。

シャベリバのご案内をいただいた後、CCL原からオープンデータとCivicTechについて、説明を行いました。

講演:「大阪から考えるシビックテック地域課題をITを活用して解決する」
講師: 原 亮氏(株式会社CCL 取締役) 


ここでの説明は大きく分けて以下の4点。

1.地域の分野ごとの課題についてITで解決する
現在、各地域ごとに、地域の異分野とITを連携させて、サービスが生まれている。例えば、「農業」×「IT」、「観光」×「IT」、「自治体」×「IT」などで掛け合わされて、地域の特定分野の課題に対してITを使って解決する取組みが増えている。

課題を持っている住民とITが出来る住民が解決するために、何をやっていくのか?問題は何なのか?を話し合い、実際にITを活用したサービスを市民のために作っている。

2.CivicTechとは?
地域で作られたサービスが、他の地域にも伝搬して、地域ごとに活発に活動されるようになってきた。

例えば、5374.jpは、地域のゴミ出しの日を知ることが出来るアプリで、最初は金沢市で作れたが、各地域で地域に合ったカスタマイズされている。

会津若松市では、消火栓の位置情報をマッピングし表示させるアプリを開発。冬は雪に消火栓が埋もれる問題を解決するために、どこにあるのかわかるように、マッピングしたアプリを開発された。

こうした活動のように、ITで技術を持った人がボランティアとなり、地域に役立つことをやっていこうという動きが、自分たちの街に役立つものを作っていき、他の地域にも拡がってきている。

3.オープンデータとは?
この地域の課題を解決するために、自治体のデータなどを有効活用出来ないか?という流れがあり、行政が管理している地図情報や施設情報などを公開してもらい、それを元に住民の課題解決するためにITとマッシュアップしていき、様々な役立つアプリが作られた。

トイレ情報の組み合わせにより、観光用の街歩きアプリや、子育て世帯用お散歩マップ、ドライバー向けのトイレ情報など、あったら助かるアプリがマッシュアップで多く生み出すことができる。

既に行政が管理しているデータを公開して貰えれば、施設情報などでどこにあるのか?などを探さなくて済む点と、情報の漏れやダブり、転載の問合せ確認など、かかる手間を軽減できることなどがメリットに挙げられる。

4.自治体のオープンデータ導入の広がり
こうした自治体のデータをオープンデータとして提供する取り組みが、拡がってきている。福井県鯖江市では、「データシティ鯖江」として、52件(2014/11/02 現在)、神奈川県横浜市では、99件(2014/11/02 現在)のオープンデータを公開。鯖江市では、市民がオープンデータを活用して作ったアプリも紹介しているほか、横浜市も官民ともに熱心な推進が続き、ともに勢いに乗っている。

※関連リンク
データシティ鯖江
よこはまオープンデータカタログ

最後に、まとめとして、

・いきなり解決することは出来ない。
・まずは、日頃から感じていることを出し合い、課題を語るところから始める
・その次に、ITでどういったことが解決出来るのか、ITが出来る人と語り合う
・その後、継続したサービス作りを目指す

といったステップを示し、こうした場から、オープンデータを浸透させ、大阪でも活用を進めていこうとの呼びかけを行いました。


講演:「オープンデータと地域の“健康”」
講師: 須藤 順氏(株式会社CCL 取締役、高知大学 地域協働教育学部門 講師)


須藤からは、健康とコミュニティの関連性についてプレゼンを行いました。

健康は個人の問題で、コミュニティなどの他人との関わりと関係あるのか疑問に思われるかもしれませんが、かなり社会との関わりで心身ともに健康かどうかも変わるようです。

今回は、健康の定義や健康に対する社会的要因について説明した上で、以下の話題を提供しました。


1.健康とソーシャルキャピタルとの関わり
・ソーシャルキャピタル(SC)とは、人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を改善できる、信頼、規範 、ネットワークといった社会組織の特徴で、人とのつながりを示した信頼、互酬性の規範、ネットワークを刺す。特筆されるのが、人との関わり合いで健康にも良い影響も悪い影響もを与えるという点。

・例えば、信頼関係の強く築けているグループで、その中の1人が禁煙をしたら、周りも気を使い出して、禁煙していくという(禁煙の伝染)や、逆に肥満気味なグループに行くと肥満の伝染が起こる。

・また、人との繋がりがあるコミュニティへの信頼性の高い(SCが高い)と健康な人が多く、信頼関係が低い(SCが低い)と、感じるほど、健康な人が少ないことがわかっているとのこと。

2.住民の活動で大切な点とは
・個人の健康も、社会要因をとらえて環境を整備していくことが大事で、情報の格差や資源の格差によって起こるSCの格差を是正していくために、住民の活動を活発化させてSCの醸成をし、知識や技術を伝搬・共有することが重要。

・そのために、住民と行政が共創しながら格差をなくしていこうとすることが重要で、医療に関わっている人たち(保健師や栄養士の方など)のチカラをもっと借りて行政と更に関わりを持ってくれれば、更に地域の内情を共有することが出来て、解決につながっていく。

3.オープンデータがもたらすもの(市民・企業や技術者・行政)
・市民が、行政にもっと深くコミットしていくツールなので、「何をすれば自分たちの暮らしが快適になるのか?」を皆で話し合って、利便性を向上させていくこと。

・日本の場合、データ>市民の課題で意識している。海外では、データ<市民の課題で、オープンデータはデータありきで考えるのでなく、課題ありきで考えること。市民の課題は何があるのか?、をまずは話し合っていくことが重要。

・行政側から見ても、行政の透明化をするために凄く重要。データ紐付けしたら、市民が自分達で自主的に作るため、行政のコストが下がる。


こうした視点から、いかに市民と行政が共創して行う街づくりや市民活動が凄く大事であることをご指摘頂きました。

加えて、参加者からの質問や指摘から、以下の論点を示しました。


1.所得格差の指標について
ジニ係数を見る。ここでは、絶対的に低いことが問題ではなく、格差をどう認識しているかがポイントとなる。例えば、アメリカとキューバの比較を例にとると、アメリカは所得が高く、格差も高い、対してキューバは所得が低く、格差も低い。この2国のジニ係数は、余り変わらず(互いに0.4くらい)で死亡率も、あまり変わらない。つまり、所得や社会的ポジションをどう認識するかが重要で、認識の仕方によっては、うつ病を引き起こすこともある。決して、所得が高いから裕福だとは限らない。

2.家庭の扉を開くのはだれか
日本で見ると、昔は青果店や酒販店など、家庭に訪問する職業がたくさんあって、他人が家の扉を開いて、話しかけることができた。現在は、そういう行動ができるのは保健師系の職業かPTAくらいと少なくなっている。彼らが地域の情報をもっており、家庭内でも、父親は縦社会に身を置いているため、地域の横のつながりを知らない。ひとりひとりが持ってる情報を引き出していくのは大事。

3.「町の健康カルテ」
参加者から声があった「町の健康カルテ」は絶対にやるべき。それを子供たちとやると、街づくりの活動になる。子供が定着する地域になるには、中学校までに親以外に触れる場が必要。
それが子ども成長の圧倒的な差となる。そうした地域は、何かあったら逃げ込める場所がある。また、大人になって街を出て行っても、気になって戻った時に顔を出せる場所がある。

4.子どもたちと町を点検する
地域に愛着をもてるよう、街にあるもの一個一個を点検をしていく。子どもの内に、自分の街を点検していく機会があることは必要だ。欧米では街のデータをみんなで作る。データづくりを街づくりとしてやっていく。街のデータをみんなで作っていく。

5.昔のものをデータ化していく
昔の写真をオープン化する取り組みなど。東北では、被災の際にそうした写真はなくなってしまった。昔の写真を引き出して共有できれば、それをネタに昔の話をして、それがきっかけでコミュニティ活動が生まれる。すべては連関する。道路の傾斜角のデータをみんなではかるなどの活動も、ベビーカーや車いすで歩けるルートをアプリ化するなどにつながる。

これらを踏まえた上で、最後に「どうすれば、安心して暮らせるようになるのか?」、これを皆で考えていくことが大事、との内容でプレゼンを締めました。


最後に、参加者の方々から自己紹介とご感想を頂いたので、一部ご紹介します。

・訪問栄養士の方から
2015年から地域包括ケアシステムがはじまるが、住之江区でも進めたい。医療、介護を必要とする人たちに、もうちょっと早く助けを求めてほしいという思いがある。
訪問して感じたことは、患者側の声をあげるのが遅く、透析が間に合わないことがあったので、何かあったら即、言ってもらえるようにしたい。

・保健師の方から
4月から住之江に来たが、同じ市内でも地域間の格差を感じている。自分は直接訪問にいくことは少ないが、記録や活動を聞いて、若いお母さんの柔軟性、コミュニケーションがないのを感じる。家族の能力、社会の教育上の問題があるかもしれないが、マニュアル化されたことはできる一方、生きる力が弱く、壁にあたったときに試行錯誤する力がない。もっと自由な発想、失敗をしていく必要がある。子どもたちも違う大人の世界を子どものうちから体感できる場があればいいと思う。

・鍼灸接骨院の方から
鍼灸接骨院を15年やっている。治療だけでは、自分で見られる患者の数は限られてしまうので、予防の活動として、運動教室をやっている。運動の指導、意識向上で街づくりに興味をもって、地域10か所で運動教室をやっている。利用料を払いながら活性化してもらい、地域とつながって街づくり、健康づくりにつながるのを改めて実感した。地域の要望があれば、散歩コースを決めたり、安全な道、坂道などでコースを組み立てる。利用者が自分を特別に見てくれるサービスづくりが必要。


今回のオープンデータ・カフェでは、具体的なアクションにつながるアイデアもたくさんいただきました。地域の方々と、ぜひ次の活動にむすびつけていきたいと思います。

住之江のみなさん、ありがとうございました!

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