2014年11月18日火曜日

【レポート】大阪市役所向けオープンデータ勉強会

11月7日(金)の午後に「オープンデータ」をテーマとして、大阪市役所の職員向け勉強会を開催しました。

会場はあべのフォルサ。大きな会場におよそ120名の職員が集まりました。

会場の様子

大阪市市民局 区政支援室 渡邊地域資源担当課長よりご挨拶


前半はゲストによる講演。大阪大学の古崎晃司先生と横浜市政策局の関口昌幸さんにお越しいただきました。

講演「オープンデータのメリットと“大阪”での活用事例」
講師:古崎晃司氏(大阪大学 産業科学研究所 准教授)


古崎先生の専門は情報科学。学問にとどまらず、世の中で使わる技術を作りたいとの思いをお持ちで、オープンデータとの関わりでは、LODチャレンジ実行委員会の関西支部長として、地元大阪・関西でのコミュニティを大きくするべく、活動を続けています。

オープンデータの概要について、定義や活用メリットをお話しいただいたのち、大阪での取り組みや事例の紹介をいただきました。

LODチャレンジの活動では、国内初のオープンデータ活用に関するコンテストとして「LODチャレンジ2011」を開催。大阪市でもイベントが開催されました。以後、LODチャレンジは毎年開催され、昨年からは大阪イノベーションハブでもハッカソンなど、連続でイベントを開催。大阪市が提供したデータをもとに「マップナビおおさか」をはじめ、大阪発のアプリやアイデアが成果物となったそうです。

また、大阪イノベーションハブは、英国のオープンデータ推進団体「Open Data Institute(ODI)」の連携先となるオープンデータ推進拠点「City Node」にもアジア初の拠点として選ばれているなど、国際的な動きとも連携を進めているとのことです。


古崎先生は、これらの動きから、大阪にはオープンデータ利活用の素地が整っていると指摘され、今後の課題として、一過性にならず実際に使われる、本当に役に立つものにつなげていくことを挙げられました。

次いで、実際に役立つ事例として、2014年8月に開催されたCivicHackOSAKA2014の例を紹介いただきました。

同イベントでは、IT技術者と行政職員がチームを組んで同じ目線でアイデア出しや開発に取り組んだ点が特徴で、40名の参加者のうち半数近くが行政職員という構成で開催されました。

そこから生まれたアプリとして、オープンデータ・カフェ@大阪のキックオフでも紹介された「PUSH大阪」の例を取り上げていただき、大阪市の情報発信に際し、ユーザは必要な情報だけを受け取り、すでに配信されているRSSを利用するため、自治体職員にも余計な業務が増えないなどの特徴があげられました。

今後こうしたアプリの利活用が拡がるために、RSSのライセンス指定をオープンデータに沿うように整備する必要あることが指摘されました。

さらに、オープンデータの活用が浸透するために、LODについても解説をいただきました。LODは「Linked Open Data」の略で、複数のオープンデータをつないで活用するための仕組み。LODチャレンジでも、「メイド・イン「『地元』」というサービス案が、アイデア部門の最優秀賞を受賞したそうです。

議論のまとめとして、

・“誰でも自由に使える”形で公開することで、様々な形で活用できる
・役立つ事例の発掘には、“現場のニーズ”が重要
・工夫次第で、今あるデータを“そのまま”利用できる
・単独ではあまり使えないデータも、他のデータと“つながる(組み合わせる)”ことで、新しい価値が生まれる

というお話をいただき、最後に「せっかく、手間をかけて作ったデータなのだから、オープンデータとして活用を!」との呼びかけをいただきました。

古崎先生のプレゼン資料は、以下で公開されています。




講演「オープンデータの活用による横浜経済の活性化」
講師:関口昌幸氏(横浜市 政策局 政策課 政策支援センター)


横浜市では政策支援センターが、市民と政策課題を共有し、政策の創造・協働を担うミッションを掲げていて、その流れでオープンデータへの取り組みを推進しているそうです。同センターが発行している「調査季報」の174号ではオープンデータが特集され、内容はすべてオープンデータとして自由な二次利用が認められています。

関口さんからは、国が掲げるオープンデータの原則に触れたうえで、自治体がオープンデータを進める際の課題を提示され、自治体として推進する意義を、

1 市民に必要な地域情報を、ユビキタスに提供するための仕組みづくりの契機として
2 政策課題を市民と共有化し、客観的なデータに基づく対話によって、共創知を形成することで、協働での解決に向けたアクションに結びつける契機として
3 公的データを有効にマネージメントし、流通させることで、地域に新たな産業や雇用を創出し、地域を総合的にプロモーションしていくための契機として

といった観点から示していただきました。

横浜では、市民の取り組みとして、

・WHERE DOES MY MONEY GO?~税金はどこへ行った?~
・横浜オープンデータソリューション発展委員会
・横浜オープンデータポータル
といった活動が生まれているほか、市会での視察、報告、参考人招致などの動きや、市役所でも
・横浜市オープンデータ推進プロジェクト
・日本マイクロソフト社との連携協定
・総務省の実証実験への参画

など、外部との連携も含め、様々なアクションを起こしている様子や、オープンデータによる「都市・経済の活性化」や「安全・安心」の取り組みなどを紹介いただきました。

それら活動の成果として、経産省・総務省ユースケースコンテスト優秀賞受賞を受賞した「東海道中ぶらり旅」のアプリや横浜市金沢区が進めている「かなざわ育なび.net」などのサービス例が挙げられ、さらには、市全体の動きをそろえるために、「横浜市オープンデータの推進に関する指針」が2014年3月に策定されたそうです。


今後の取り組みとしては、市役所内の職員の啓発やオープンデータの整備、市民・企業や他自治体の連携促進などがあり、具体的には
 
①オープンデータの提供・活用に向け、新Webサイトオープン時にあるべき主要なオープンデータの整理
②市データカタログの作成
③オープンデータ等を活用した情報分析による課題・ニーズの提示や庁内における政策立案・情報分析の支援、政策提案、市民との課題の共有のための情報ポータルサイト((仮称)横浜地域力ポータルサイト)の作成
④民間による推進の動きとの連携

などが挙げられました。

また、大きな取り組みとしては、地域の社会的課題やNPO法人などの支援団体の取組みを可視化し、市民参加を促すことで新しい公共の仕組みをつくるウェブプラットフォーム「LOCALGOOD YOKOHAMA」が、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボとアクセンチュア株式会社との協力で立ち上げがあり、横浜市のオープンデータが活用されるそうです。

利活用を進める市民に向けては、若者の参画を目指した「よこはまユース アイデアソン・ハッカソン」が開催されるなど、イベントなどの開催も継続的に進化を続けているそうです。


ワークショップ「データ活用を考えるアイデアソン」
進行:原 亮(株式会社CCL 取締役)

おふたりのご講演ののち、参加職員全員によるアイデア出しのワークショップを開催しました。

このワークでは、それぞれが自分の担当業務で持っている各種データを洗い出し、その活用方法を考えるものとして行われました。オープンデータのテーマで、100名を超える行政職員が一斉にアイデアソンを行ったのは、今回が初の事例ではないでしょうか。

100名規模でのアイデアソン!

ワークでは、所属の異なる職員同士が4~6名でグループになり、お互いのアイデアをディスカッションで交換しながら、全員でデータの活用方法を考えた結果、数百件のデータのリストやアイデアが集まりました。

所属の異なる職員でグループに 

ペアでのブレスト 

お互いのアイデアを交換 

活発な意見交換が続きます

アイデアを全体へシェア。民間事業者向けの活用案なども

 古崎先生と関口さんからもコメントをいただきました


ワークで出たアイデアを以下、一部ご紹介します。

アイデア1:港湾周辺環境アクセス結果
▼データの内容
大気・水質・水生生物の現況と将来予測評価データ
▼活用案
水辺の生物情報、将来の住環境指標、釣りマップ情報
▼実現を阻む壁
難しい専門用語や複雑なモデル計算
▼借りたい力や協力者
用語解説、数値入力だけで自動計算

アイデア2:独居高齢者訪問・見守りにて集約した独居高齢者の声
▼データの内容
独居高齢者向けの在宅サービスの開発
高齢者の多い地域での商品開発
介護ニーズに対するサービス提供
▼活用案
高齢者に対する健康アドバイスサービス、保健・健康に関するデータ
▼実現を阻む壁
データを元に適切にアドバイスが出来る人材の不足
▼借りたい力や協力者
Nurse資格を持っていても就労してない人材

アイデア3:暑さ指数
▼データの内容
過去数年の夏の暑さ指数
▼活用案
どんな人が救急搬送されているか(年齢・職業など)を分析し、ターゲットを絞った注意報を出す
飲み物の目安・入荷
▼組み合わせるデータ
救急搬送
▼実現を阻む壁
有意義ではないのでは?長期間の予想が出来ないなど
▼借りたい力や協力者
気象予報士

アイデア4:樹木台帳
▼データの内容
市内の都市公園内の植栽の種類・数の一覧
▼活用案
観光案内
▼実現を阻む壁
正確なデータになっているか
▼借りたい力や協力者
現場事務所

ワークでは、アイデアを実現させようとした際の課題を、実現を阻む壁として挙げ、それを乗り越えるために必要な力や得たい協力者を考えました。

オープンデータを推進する際によく挙がる声として、自分たちがオープンデータを整備するための余力(時間や費用)がないというものが典型と言われていますが、今回のワークで「借りたい力や協力者」を出し合ったところ、市民やボランティアなどが挙がったほか、上記の例に示したような当該分野に精通した専門家、さらには職場内での協力体制といったものが新たに示されました。

今回参加した職員からのアイデアをもとに、実現可能性のあるもの、発展可能性のあるもの、そして、実現したら市民の役に立つものなどを検討し、大阪発のオープンデータ活用やシビックテックの新しい成果につなげていくことがポイントとなります。


ワーク後には、大阪市総務局より、「今後の本市のオープンデータ施策の方向性」と題した市役所内の今後の動きの説明があったほか、CCLより、今後開催するオープンデータ活用を目指した市民協働の場(オープンデータ・カフェ、アイデアソン、ハッカソン)などのご案内をさせていただきました。

大阪市総務局より今後の動きについて

「大阪から考えるシビックテック」事業では、市役所各部局や市民のみなさまの力をあわせて、それぞれがもつアイデアを実現に結び付けれるよう、活動を続けてまいります。

ご登壇いただいた講師の先生方、ご参加いただいた職員のみなさま、貴重な声を聞かせていただき、ありがとうございました。



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